60年以上にわたり革と向き合う。駒屋の革漉き職人・神田さん
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財布や名刺入れ、キーケースなどの革小物。完成した製品を見ると、美しい革や丁寧な縫製に目が向きます。
しかし、その品質を支えているのは、完成すると見えなくなる数多くの工程です。
その中でも、製品の使い心地や仕上がりを大きく左右するのが「革漉き(かわすき)」です。
革漉きとは、革を製品に合わせた厚さに調整する工程のこと。折り曲げる部分は薄く、強度が必要な部分は厚みを残すなど、製品ごとに細かな調整が求められます。
この重要な工程を担当しているのが、駒屋の革漉き職人です。現在78歳。
60年以上にわたり革と向き合い、駒屋のものづくりを支えてきました。
60年以上、革と向き合い続けて
若い頃からずっと革を触ってきました。気が付けば60年以上になります。
時代とともに機械も製法も変わりましたが、革という素材そのものは変わりません。
天然素材なので、一枚一枚状態が違います。同じ革でも硬さや伸び方、繊維の詰まり方が微妙に異なるため、その革に合わせて仕事をしなければなりません。
長年続けていても難しい仕事ですが、それが革の面白さでもあります。
毎日同じように見える作業でも、実際には毎回違う革と向き合っています。だからこそ経験が必要ですし、長く続けても学ぶことがなくなることはありません。
60年以上にわたり革と向き合い続ける革漉き職人。
革漉きは製品の使いやすさを決める仕事
革漉きという仕事は、完成品になるとほとんど見えなくなります
しかし実際には、財布の開きやすさや手なじみ、縫製の美しさなど、多くの部分に影響する重要な工程です。
薄すぎれば強度が落ちる。厚すぎれば使いづらくなる。
そのちょうど良い厚みを見極めるのが革漉き職人の役目です。
「同じ革でも、0.数ミリ違うだけで仕上がりが変わるんです。それが革の難しいところですね。」
革小物は見た目だけでなく、使いやすさも大切です。毎日手にするものだからこそ、厚みの調整ひとつで使い心地が大きく変わります。
完成すると見えなくなる工程ですが、その品質を支えているのが革漉きという仕事です。
革の状態を確認しながら作業を進める神田さん。
革を見る目と機械を整える技術
革漉き職人の仕事は、革を漉くだけではありません。
高い品質を維持するためには、革漉き機を常に最適な状態に保つことも欠かせない仕事です。
刃の状態を確認し、細かな調整を行いながら、その日の作業に備えます。
長年使い続けてきた機械のわずかな変化にも気付き、最適な状態を保つことができるのは、積み重ねてきた経験があるからこそです。
革を見る目と、機械を整える技術。その両方が揃って初めて、安定した品質の製品づくりが可能になります。
革漉き機は何十年も使い続けていますが、毎日のメンテナンスを欠かしません。良い製品は、良い機械の状態から生まれるのです。
革漉き機のクリーンナップを行う様子。安定した品質は日々のメンテナンスから生まれます。
駒屋野球部で汗を流した日々
若い頃の神田さんは、仕事も遊びも全力でした。
当時は会社に野球部があり、仕事が終われば仲間たちと練習に励んでいました。
駒屋野球部では、特定のポジションだけではなく、その時々で必要な場所を守るユーティリティープレーヤー、強打者として活躍していました。
どこを守ってもチームの力になれるように。必要な役割をこなすことが自分の役目だったそうです。
今振り返ると、その姿勢は仕事にも通じていたのかもしれません。
革漉きだけでなく、機械の調整やメンテナンスなど、現場で必要なことには何でも取り組んできました。
仕事も野球も本気だったからこそ、仲間との絆も深かったといいます。
同じ職場で働きながら、一緒に汗を流し、試合に出場し、時には飲みに行く。そんな時間が自然にありました。
「今思えば本当に良い時代でしたね」と懐かしそうに話してくれました。
野球大会の優勝記念写真。2列目中央の21番が神田さん。
見えない部分に宿る職人の技
完成した製品を手に取ったお客様が、「使いやすい」「手になじむ」「きれいに仕上がっている」と感じてくださる。
その裏側には、革漉きという見えない工程があります。
完成すると見えなくなる仕事ですが、だからこそ手を抜くことはできません。
一枚一枚の革に向き合い、丁寧な仕事を積み重ねる。それが60年以上変わらないものづくりです。
華やかな仕事ではありません。しかし、見えない部分だからこそ妥協せず、一つひとつの作業を積み重ねることが大切だと考えています。
"ヘリ漉”と呼ばれる、革財布のパーツのヘリを一枚一枚漉いてる様子。
これからも革と向き合い続ける
78歳となった今も、現役の革漉き職人として活躍しています。
革漉きという工程は決して目立つ仕事ではありません。しかし、その品質を支えているのは職人たちの確かな技術です。
長い年月をかけて磨かれた経験と知識。そして革への深い理解。
その技術には、駒屋のものづくりの原点ともいえる職人の姿勢が詰まっています。
これからも、その技術は駒屋の革製品づくりを支え続けていきます。